解体が進んでいます。
解体前↑。
写真左手の壁から左は築58年。
今回解体しているのが築44年の増築部分。
「古民家」として建築基準法に反した築58年は、床下インスペクションにてシロアリ被害が無いと判定しました。
ところが…
大黒柱がこのように、シロアリ被害を受けています。写真は44年側から撮ったものです。本来硬く味が渋いケヤキがこのように食べられているのは衝撃です。
ちょっと注目なのは、
・基礎のない58年の伝統建築側はシロアリに食われていない。
という事です。
これは、44年側の以下のさまざまな条件が重なったためです。
①〈床下を密閉〉
外壁にぐるりと基礎を立ち上げたものの、「通気」に配慮せず。
②〈床下は多湿〉
床下は土のままでした。竹が生えていたくらいなので、増築時は庭木を切っただけで木材を並べて工事を始めたのでしょう。
③〈高温〉
屋内ボイラーを設置してある。
すぐ横がお風呂です。コンクリートブロック造の腰壁が張り巡らされていますが煙突の熱で放射し、十分に濡れた木が温まっていたことでしょう。
④〈内部の木部が濡れる〉
窓サッシの勾配は室内に水を取り込む仕様。さらにタイルの割れなどからたくさんの水分が材木に伝わっていたはずです。
⑤〈外壁素材も密封タイプ〉
外壁は板金仕上げ。昔の事なので、柱に直接釘で打つ通気性のない工法。
⑥〈屋根も密封〉
屋根も板金です。
⑦〈柱と土の絶縁がしていない〉
普通、柱の下には礎石という土台石が敷いてあります。今回は、その石の上に屋内で整地した土を盛ってありました。
余った土を捨てず、むしろ柱のまわりに盛る。(まるで子供の工作ですが、こんなことは40〜50年前の仕事ではザラにありました。)
おかげで柱が防水されず、土の湿気が直接頭に伝わりさらに暖かく保たれることで、さすがの大黒柱もシロアリの格好の餌食になったと思われます。
⑧〈58年ゾーンと44年ゾーンの床下が遮断〉
この写真の壁面はもともと外壁であったため、土の部分まで土壁が塗り下ろしてあります。
よって床下と壁が土で一体化してしまい、湿気を柱に伝えてしまっていました。
【まとめ】
58年ゾーンは、床下が高く通気性が良く、非常にひんやりと乾いています。48年ゾーンは、なまじ現代のコンクリートや板金というハード素材を使ったせいで、湿気や暖気が閉じ込められ高温多湿に長期間さらされたことで、 大きなシロアリの餌場になってしまいました。
こうしたことからわかるように、建物には「通気性」が大切です。自らの身を暖かく守ることで家の通気性を阻害すると、このように家自身が傷んでしまうと言うパラドックスがあります。
今の新築は、「高気密」でありながら外部には充分な「通気性」を持たせた工法で建てて行きます。
今後の工事の進捗もご報告します。