8月11日、関市にて、この度の西日本豪雨にて被災した古民家を鑑定してきました。岐阜支部メンバー5人の鑑定士です。

このように、内部は板張りも畳も全て床を取り払われ、防災ボランティアによって壁や木部もきれいに拭きとられた後です。

すぐ横の川が氾濫し、なんと床上1.8mまで水没したといいます。昔ながらの泥壁に聚楽が塗ってある壁がその水圧を物語っています。

「こんな広い家が被災して気力がなくなりました。潰して駐車場にでもしようと思う。私は裏の離れに住みます。」と言う持ち主さま。

しかしながら、鑑定をしてみると、壁の損壊と設備以外は家の構造部である柱や梁に損害が全く見受けられません。地面に近い土台の木でさえも、含水率が11%と安定しており、シロアリ被害もないため今後十分な使用が可能です。

川沿いの竹を見ていただくと分かるように、川が大きく氾濫したのでありますが、古民家は、構造体が外にさらされているためむしろ乾くのが早いのです。川の氾濫だけのため、2メートル近い水が4時間以内にひいてしまったそうです。

さらにふすまなどこの水圧がかかる壁がすぐ飛んで行ったために、壁に抵抗がなく家が歪まなかったと考えられます。

こう考えると、柱を壁で被ってしまう現在の建て方は、災害の想定を逆にしていない気さえしています。

命を守れるか、家のリユースができるか、の取捨選択ですね。

そんな話をしているうちに、「そんなふうにもったいないと言ってくださるなら、材木商の祖父が建てたこの家をまた再利用できないか考えていきたい」とのコメントをいただきました。

人は壁が汚くなると言えばもう悪くなってしまったのではないかと考えがちですが、やはり大事なのは構造体です。

このたびはボランティアの簡易鑑定とはいえ、建築士の支部長2人と寺社仏閣を手がける鑑定士など、建築のプロによる鑑定でしたので、そんな価値も見いだすことができました。

(新聞など3誌が興味を持って取材にも来ていただきました)

この家が瓦礫やゴミにならずもう一度命を吹き返すには、を引き続き考えていきたいと思います。鑑定書はは後日発行されます。